日本遺産の地を旅する~「鯖を愛するまち」若狭の小浜と鯖街道
「京は遠ても十八里」と言われた鯖街道
福井県の日本遺産「御食国(みけつくに)若狭と鯖街道」のツアーが人気です。
そこで、この機会に日本遺産ツアーを企画する上で考慮すべき点を旅行会社の立場から振り返りたいと思います。
2017年3月3日11時38分(イイ鯖)に、福井県小浜市において「鯖を愛するまち」宣言がなされ、鯖の日(3月8日)を含む3月3日から3月12日まで「鯖ウイーク」なるイベントが行われました。
私は、ちょうどこの期間中の3月10日生まれということもあり、主催者より招かれ、「鯖街道のよりよく魅せる人になるために」というタイトルで若狭おばま日本遺産大学 特別編として小浜市まちの駅「旭座」にて講演させていただきました。
講演の内容は、地元の方々が他県から観光客を誘致する際に心がけることと、日本遺産をテーマとしたツアーの企画についてでした。
小浜は、NHKの朝ドラ「ちりとてちん」の舞台になった鯖街道の出発地で、若狭湾であがった新鮮な魚介類を京の都へ運んだ拠点だった町です。
この地は暖流の対馬海流と寒流のリマン海流が出会う場所で、国内有数の漁場なのです。
「鯖寿司」「へしこ」に「若狭カレイ」などの名産品はこの地が昔から海の幸に恵まれてきたことを示しています。
中でも有名な鯖はすぐ傷みやすく、数を数えている間にも腐るといわれるほどで、「サバを読む」の語源になりんました。
京へと様々な食材を運んできた歴史がある小浜の中で、1601年に問屋や仲買人など魚を取り扱う専門店が立ち並ぶいづみ町は、400年以上の歴史があり、小浜で水揚げされた鯖が、ここから京へと運ばれて行ったという鯖街道の起点です。
「京は遠ても十八里」と言われ、鯖は一塩され一昼夜かけて京へと着く頃にはちょうど良い味加減になって、都の庶民に親しまれた魚だったのです。
小浜を中心とした「鯖街道」日本遺産ツアーの企画
この小浜を中心とした日本遺産ツアーでは、
①街道を歩く旅:小浜西組散策や熊川宿、朽木宿、花折峠越えの「鯖街道」を歩く旅
特に京都出町柳から歩く鯖街道(若狭街道)随一の難所と言われた「花折峠」(標高591m)の旧道は、安曇川と和邇川の分水嶺となっており、近畿自然道の一部でもあります。沿線の葛川明王院参拝者が、仏前に備えるシキミをこの峠付近で摘んだことから「花折峠」と呼ばれるようになりました。
街道歩く旅以外にも次のようなテーマ旅行が企画できます。
②写真撮影の旅:街道沿いの城下町や宿場町、豊かな自然や受け継がれてきた伝統的行事の撮影ツアー
③歴史への旅:浅井長政の次女「初」ゆかりの小浜城や常高寺、北前船の寄港地としての小浜、放生祭などの各種祭礼の見学ツアー
④大人の寺旅:若狭歴史博物館の常設展示「若狭のみほとけ」や若狭地域の仏像、神宮寺の「送水行事」を訪ねるツアー
⑤街並みスケッチ旅行:重要伝統建造物群の小浜西組や熊川宿、三方五湖や瓜割の滝等でのスケッチツアー
⑥ハイキング・登山:海幸彦・山幸彦の伝説が残る針畑峠ハイキングや後瀬山登山ツアー
また、旅行者の立場から言えば、旅行の4要素である
①観る ②食べる ③遊ぶ・学ぶ ④買う
をツアーの盛り込めば充実した内容になります。
そこで、「鯖街道」をテーマとした日本遺産ストーリーを語りつつ、
①重要伝統的建造物群:小浜西組、熊川宿、お水送り、瓜割の滝
②「浜焼き鯖」等の鯖街道オリジナルメニュー
③三方五湖、小浜の祇園祭礼群、和久里壬生狂言
④道の駅、直売所での若狭塗、海産物
などの見学や体験がお薦めです。
パワースポットとしての若狭「日本遺産」ツアー
また、一之宮巡りをされている方には上社の若狭彦神社、下社の若狭姫神社の参拝も外せません。
若狭彦神社の御祭神は彦火火出見尊(山幸彦)とされていますが、元々は遠敷大明神(おにゅうだいみょうじん)とも呼ばれる若狭土着の神の神様です。
若狭姫神社の本殿脇にはご神木の「千年杉」があり、若狭の国に若い息吹きを込める神と言われていますが、乙姫さま(豊玉姫命)の坐す神社だけあって、力強さと共に女性的な優しさも感じられます。
また、近畿地方には五芒星という古い歴史を持つパワースポットが、五つ(伊吹山、伊勢、元伊勢内宮皇大神社、伊弉諾宮、熊野本宮大社)の頂点となり星形を造っていますが、この若狭の地は熊野本宮から平城京、平安京を経て一直線に北へ伸ばした延長線上に位置しています。
そこで、私は若狭に来るたびに、自分の意思というよりもこの不思議な星に導かれて来たようにも思えるのです。
小浜の日本遺産は御食国のストーリーがテーマですが、有名な東大寺二月堂の「お水取り」行事と関連する鵜ノ瀬「お水送り」行事など、自分の関心のあるストーリーを探求する旅も思い出に残る日本遺産の旅になります。
海と都をつなぐ若狭の往来文化遺産群 ~御食国若狭と鯖街道~
日本遺産ストーリー 〔福井県小浜市、若狭町〕
若狭は、古代から「御食国」として塩や海産物など豊富な食材を都に運び、都の食文化を支えてきた地である。
また、大陸からつながる海の道と都へとつながる陸の道が結節する最大の拠点となった地であり、古代から続く往来の歴史の中で、街道沿いには港、城下町、宿場町が栄え、また往来によりもたらされた祭礼、芸能、仏教文化が街道沿いから農漁村にまで広く伝播し、独自の発展を遂げた。
近年「鯖街道」と呼ばれるこの街道群沿いには、往時の賑わいを伝える町並みとともに、豊かな自然や、受け継がれてきた食や祭礼など様々な文化が今も息づいている。
★平成芭蕉ブックス
①『日本遺産の教科書 令和の旅指南』: 日本人の心に灯をつける 日本遺産ストーリーの旅
②『人生は旅行が9割 令和の旅指南Ⅰ』: 長生きして人生を楽しむために 旅行の質が人生を決める
③『縄文人からのメッセージ 令和の旅指南Ⅱ』: 縄文人の精神世界に触れる 日本遺産と世界遺産の旅